個展「ゆらぎながら、今。」
兵庫県・淡路島の森に約7年間通い、そこで出会った人や自然の「ゆらぎ」を捉えた写真展である。撮りためた写真を見返す中で、現地の人々と関わる自身の役割が、ある時はフォトグラファー、またある時は子や友人のように変化していることに気づかされた。そうした変化を通じて得たのは、固定された役割の「本当の自分」など初めから存在しないのではないか、という問いである。関係性の中で揺らぎ続ける姿こそが、人間や自然の本来のあり方なのだと解釈している。
本展では、一つの役割に縛られず変化し続ける人や森の姿を捉える。そして、「役割」や「カテゴリ」という固定観念から解放するための視点を提示する。
作品はすべて作家自身の手でプリントを行っている。紙は、兵庫県西宮市の伝統工芸である「泥入り名塩(なじお)和紙」を採用。あえて顔料ではなく染料インクを用いてプリントすることで、インクが和紙へと沈み込み、泥の粒子と織りなす複雑な表情を生み出した。写真でありながら絵画のような質感を持つそのプリントは、展示のテーマである「ゆらぎ」そのものを体現している。
実施日: 2025年10月
会 場: 自家焙煎珈琲 喫茶路地(大阪)
形 式: 個展
媒 体: 名塩和紙(インクジェット染料プリント)
下町芸術祭2025
「衣_koromo」― インスタレーション ―

本作の原点は、約7年にわたり通い続けている淡路島の森での体験にある。そこには、身近な草木を煮出し、布や糸を染めて暮らす女性がいた。彼女の「自然の色を纏(まと)う」という手仕事や営みに触れたことをきっかけに、人が自然を思う精神性を写真を通して体感するプロジェクトとして、下町芸術祭(兵庫県・長田)にて「衣_koromo」を発表した。
古来、人々は万物に神が宿ると信じ、草花で染めた衣を身につけることで自然の生命力を身体に取り込もうとした。本作は、こうした精神性を写真という現代のメディアによって体感する試みである。暗室の中で、プロジェクターから照射される森の光(写真)を媒介とし、鑑賞者が自然のイメージを自らの身体に「纏う」体験型のインスタレーションを展開した。
下町芸術祭会場となった兵庫・長田区 私立図書館ユニット422のガレージ空間を暗室化し、白い服を着用した来場者の身体へ、作家(川本)が撮影した「自然の光(写真)」を直接投影した。投影時のポートレートはその場でインスタント写真(チェキワイド)としてプリントされ、被写体となった参加者に手渡されるとともに、会場内のスライドショー映像として展示された。
実施日: 2025年10月〜11月の内4日間
     (下町芸術祭2025)
形 式: 下町芸術祭2025・インスタレーション
会 場: ユニット422(兵庫・長田)
撮影参加者:10名
六甲ミーツ・アート 芸術散歩2021「ぽつりぽつり」
六甲ミーツ・アート2021にて発表された本作は、「今」という瞬間を共有することの尊さと、歳月を経て変わった友人との距離が再び重なり合う心地よさを記録した映像作品である。
川本自身が30歳という節目を目前に、兵庫県の六甲山で高校時代の友人との再会した体験を起点としている。高校卒業から10年以上が経過し、異なる道を歩んできた二人の間には互いに「知らない時間」が存在していた。しかし、六甲山の森で目にした「真っ赤なトンボ」や「水面を跳ねる魚」といった、たわいもない自然の風景を分かち合う中で、離れていた時間が少しずつ引き寄せられ、心が再び重なり合っていく過程を描き出した。
本作では映像に加え、音によるアプローチを重視している。六甲山を登りながら録音した環境音(フィールドレコーディング)とピアノの音を組み合わせて楽曲を制作。ポツリポツリと奏でられるピアノの音は、静かな自然の中で途切れ途切れに交わされる「飾らない会話の質感」を表現している。
実施日: 2021年
会 場: 六甲山(兵庫)
形 式: 六甲ミーツ・アート 芸術散歩2021
    C.A.P.(芸術と計画会議) メンバーとして出展
媒 体: 映像、音
協 力: 株式会社ワコム
個展「スモア」
本プロジェクトは、約2年間の「ブッシュクラフト※」の実践を起点に、現代社会における「自由」の再定義を試みる取り組みである。リュック一つの最小限の装備で森に身を置く中で、私は不自由さの正体が社会の効率化システムによる「自らの思い込み」だったと気づかされた。本作では、思考と行動が直結する心地よさを再発見する過程を、写真に描画する「フォト・ドローイング」をはじめ、映像、言葉、環境音を用いて五感で追体験する空間として構築している。撮影した写真を背景に主観的な思考を「人の姿」として重ね、現代人が本来の自在な感覚を取り戻すための問いを提示する。タイトルの「スモア(語源:Some more)」は、自然や他者を「もっと深く知りたい」と願う純粋な知への熱量を象徴している。
※ブッシュクラフト
自然の恵みや最小限の道具を駆使し、自然環境の中で衣食住を作り出すアウトドアスタイル。
◼︎写真作品(写真に絵を描くフォト・ドローイング)
用 紙:SiHL(シール)マスタークラス スムースマットコットンペーパー
サイズ:360×240mm
技 法:インクジェット顔料プリント
額 装:大衣シルバーフレーム
点 数:14点
◼︎映像作品(全編15分)
内容:フィールドレコーディングによる環境音、写真、ドローイング、言葉を重ね合わせた動画作品
実施日: 2021年
会 場: meriken gallery & cafe(兵庫・神戸)
形 式: 個展
媒 体: 映像、音響、プリント
協 力: エプソン株式会社、株式会社ワコム
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